継続雇用か転職か2026-07-07 公開監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

継続雇用(再雇用)と転職、どちらを選ぶか — 判断基準の作り方

「60歳が近づいてきて、このまま今の会社の再雇用でいいのか、転職を考えるべきなのか迷っています」

皆さま、この相談は50代後半の方から特に多くいただきます。高年齢者雇用安定法により、企業には希望者全員の65歳までの雇用確保が義務付けられており、70歳までの就業機会確保も努力義務とされています。つまり、「今の会社に残る」という選択肢は、多くの方にとって現実的に開かれています。問題は、それが自分にとって最善の選択かどうかです。今回は、継続雇用(再雇用)と転職、どちらを選ぶべきかを3つの質問で整理します。

0. 前提 — 継続雇用は「安定」だが「同条件」ではない

率直に言うと、継続雇用は多くの企業で、定年前と同じ役職・同じ給与ではなく、契約形態や職務内容が見直された条件になることが一般的です。これは制度上の一般的な傾向であり、会社によって差はありますが、「継続雇用=安泰」という単純な理解は避けたほうがいいでしょう。継続雇用を選ぶ場合も、具体的な条件を事前にしっかり確認することが大切です。

1. 質問1 — 「今の仕事にやりがいを感じているか」

継続雇用の最大のメリットは、慣れた環境・慣れた業務を続けられることです。ここに強いやりがいや安心感を感じているなら、継続雇用は合理的な選択です。逆に、「もう今の仕事に情熱を感じない」「新しい環境で挑戦したい」という気持ちが強いなら、転職を検討する価値があります。

2. 質問2 — 「収入面で継続雇用と転職、どちらが有利か」

感覚ではなく、実際の数字で比較してください。継続雇用の場合の想定年収(多くの場合、現役時代より下がります)と、転職活動で実際に得られそうな年収レンジ(年収の現実の記事を参考に)を、具体的に比較します。転職エージェントに市場価値を確認してもらう、あるいは実際に応募して提示条件を見てみるといった、具体的な情報収集が欠かせません。

3. 質問3 — 「70歳まで働くことを見据えているか」

継続雇用は多くの場合65歳までの制度設計ですが、70歳までの就業機会確保も企業の努力義務となっています。あなたが70歳まで働くことを見据えているなら、「今の会社に65歳までいて、その後どうするか」まで含めて考える必要があります。65歳の時点で改めて転職や複業を検討するより、50代のうちに市場価値を維持しておくほうが、選択肢は広く残ります。

4. 継続雇用のメリットとデメリット

メリット:転職活動の手間がなく、慣れた人間関係・業務の中で働き続けられる。厚生年金や退職金制度など、既存の福利厚生をそのまま維持できる場合が多い。デメリット:給与が下がりやすい、役職や裁量が縮小しやすい、新しい挑戦の機会が限られやすい。誤解がないように申し上げると、これは制度の一般的傾向であり、会社によっては継続雇用でも裁量ある仕事を任されるケースもあります。自社の制度を具体的に確認することが重要です。

5. 転職のメリットとデメリット

メリット:専門性次第では年収を維持・向上できる可能性がある、新しい環境でモチベーションを再構築できる、役職や裁量の面で継続雇用より良い条件を得られることがある。デメリット:転職活動の労力がかかる、新しい環境への適応が必要、必ずしも希望通りの条件で決まるとは限らない。

6. 対比 — 迷った末にどちらを選んだか

モデル化した2人の話です。どちらも「59歳、継続雇用が目前」という状況です。

Iさんは、収入面での比較を具体的にしないまま「なんとなく不安だから」継続雇用を選びました。1年後、役職も裁量も縮小した仕事に物足りなさを感じつつ、「あのとき転職活動をしておけばよかった」と振り返っています。

Jさんは、継続雇用の想定年収と、実際に転職活動をして得られた内定の年収を具体的に比較しました。結果、継続雇用のほうが総合的に有利だと判断し、納得して残る選択をしました。同じ「継続雇用を選ぶ」という結論でも、比較検討した上での選択には迷いがありません。

2人の差は、結論ではなく、比較のプロセスを踏んだかどうかです。

7. 継続雇用の制度を確認するときのチェックリスト

継続雇用を検討する際は、次の点を人事部に具体的に確認することをお勧めします。①想定される役職・職務内容、②想定年収と現在との差分、③契約形態(嘱託・パート等)と社会保険の扱い、④評価制度の有無と昇給の可能性、⑤70歳までの就業継続の可能性。これらを曖昧なまま「なんとなく残る」と決めてしまうと、後になって「聞いていた話と違う」というギャップが生じやすくなります。書面での確認を含め、具体的な数字と条件を握っておくことが重要です。

8. 転職活動を並行して行うという選択肢

継続雇用か転職かで迷っている場合、どちらかに決め打ちする前に、実際に転職活動を並行して進めてみることをお勧めします。実際に応募し、内定条件を提示されて初めて、継続雇用との比較が具体的にできるようになります。転職活動をしたからといって、必ず転職しなければならないわけではありません。選択肢を広げるための情報収集として、気軽に一歩を踏み出してみてください。

9. 「どちらも選ばない」という第三の道

継続雇用でも転職でもなく、複業や独立という第三の道を選ぶ方も増えています(複業・独立の記事で詳述)。会社に残りながら複業で新しい収入源を作る、あるいは段階的に独立への移行を進めるといった選択肢も、50代後半からの現実的な選択肢の一つです。二者択一で考えず、選択肢を広く持った上で判断することをお勧めします。

10. 決めた後の後悔を減らす、最後のひと工夫

どちらを選んだとしても、決断した後に「あのときこうしていれば」という後悔が完全になくなることはありません。ただし、決断のプロセスを紙に書き残しておくことで、後悔の度合いを大きく減らすことができます。「この時点で、こういう情報をもとに、こう考えて決めた」という記録があれば、後から振り返ったときに、当時の自分が最善を尽くしていたことを確認できます。感情だけで判断せず、プロセスを残すという小さな工夫が、長期的な納得感につながります。

11. 上司・人事に相談するタイミング

継続雇用と転職のどちらを検討している場合でも、社内でその意向をいつ、誰に伝えるかは慎重に考える必要があります。早すぎる相談は、周囲からの見られ方に影響することがあり、遅すぎる相談は、継続雇用の制度設計上の選択肢を狭めることがあります。一般的には、継続雇用の意思決定期限の数ヶ月前を目安に、まずは信頼できる直属の上司や人事担当者に、率直に今後の意向を相談することをお勧めします。相談の際は、決断済みの結論を伝えるのではなく、「検討している」という段階であることを明確にした上で、会社側の制度や意向も聞き出すという、双方向の対話を意識してください。一方的な報告ではなく、対話として進めることで、より具体的で有益な情報を引き出しやすくなります。また、こうした相談を早めに行うことで、会社側も後任の育成計画や引き継ぎのスケジュールを立てやすくなり、円満な関係を保ちながら次のキャリアを検討できるというメリットもあります。仮に転職を選ぶことになったとしても、円満な関係のまま退職できれば、業界内での評判やその後のつながりにプラスに働くことが多いものです。特に同業界内での転職を視野に入れている場合、前職との関係性が悪化すると、思わぬところで評判が伝わり、選考に影響することもあります。最後まで誠実な対応を心がけることが、長期的な信頼につながります。どの選択をするにせよ、去り際の振る舞いが、それまで積み上げてきたキャリアの評判を左右することを忘れないでください。長年の勤務への感謝を言葉にすることも、円満な移行のための小さな、しかし大切な一歩です。あなたのこれまでのキャリアに敬意を払いながら、次の一歩を選んでください。

(結論)比較の材料を、感覚ではなく数字で持つ

まとめます。①継続雇用は「安泰」ではなく「条件が見直された雇用」である。②やりがい・収入・70歳までの見通しの3つの質問で判断材料を作る。③どちらを選ぶにしても、具体的な数字で比較することが後悔を減らす。

迷っているなら、まず動いてみることをお勧めします。転職活動をして実際の内定条件を見てから、継続雇用と比較しても遅くはありません。15問の適性診断で、自分がどちらのタイプに近いかを確かめてみてください。

皆さんいかがでしたでしょうか。どちらを選んでも正解はあります。大事なのは、比較した上で選ぶことです。では今日もがんばりましょう。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

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